LGBTカップルの遺産相続で問題になる!「遺留分」

about lgbt law affair
rp_a0002_003675_m1-1024x679.jpg

■全財産をパートナーに遺贈できないケースがある

全財産をパートナーへ残すように遺言を作成しても、次のケースのような場合は全てをパートナーへ遺せない場合があります。

【CASE2】 パートナーへ財産すべてを遺贈すると遺言書に書いたAさん。Aさんは不慮の交通事故で亡くなってしまった。パートナーのBさんにはAさん名義の自宅を主とした3000万円の遺産が渡る予定だった。しかし、Aさんの親はAさんのセクシャリティーを受け入れておらず、遺留分として1000万円をBさんに請求した。

この場合、遺言があっても自宅を処分して1000万円を請求した親へ渡さなければなりません。これが遺留分です。またこの請求を遺留分減殺請求と言います。
全財産をパートナーへ遺贈するという遺言を作った場合、一定の相続人にとっては、「最低限相続できる財産であるはずの『遺留分』を侵害されている」ということになるので、民法では侵害された分を取り戻すことができるという仕組みになっています。親には遺産の3分の1に対して遺留分がありますので、特にセクシャリティーを受け入れていなかった場合にこれを放棄してもらうことはかなり難しくなってくるでしょう。

■遺留分を請求できる人は誰なのか?

遺留分を請求できる人は、亡くなった本人の
①父母 ※いない場合は祖父母になります。
ただし、子がいる場合は父母(祖父母)に遺留分はありません。
②子
③配偶者
です。兄弟姉妹には遺留分はありません。
もちろん、遺言自体が遺留分を侵害していなければ請求はできません。

■どれくらいが遺留分になるのか?

具体的に遺留分はどれくらいになるのかを見てみましょう。(婚姻関係にある方がいる場合もありますので、念のためここでは配偶者の遺留分にも触れておきます。)
第5回_円グラフ_1
第5回_円グラフ_2
第5回_円グラフ_3
第5回_円グラフ_4

このように、一定の相続人には全財産に対して1/3~1/2の遺留分があるということを覚えておきましょう。

■遺留分を考慮した遺言書を作成しよう!

LGBTカップルの場合、パートナーに全財産を遺したいのは当然のことですが、遺留分がある場合は非常に争いになりやすいです。ですから残されたパートナーが親族との争いを回避できる方法を検討し、遺言書を作りましょう。
あなたの財産に対して、遺留分を請求できる人がいる場合には下記の方法を検討しましょう。

① 遺留分の請求をしないようにあらかじめ請求できる人に伝えて、かつ遺言書にも遺留分減殺請求をしないことを求める内容を明記しておく

ただし、これらは法的に拘束力がないので確実に請求を阻止することはできませんが、理由も明記しておくことで、請求者があなたの意思を尊重してくれる可能性もあります。

② 遺留分を侵害しない遺言書をつくる

【CASE2】はAさんが書いた「親の遺留分を侵害することになる遺言書」のために、パートナーBさんは自宅を処分せざるを得ない状況になりました。ですから、遺言書にはAさんの親には遺留分の1000万円を相続させるように明記しておけば、パートナーのBさんとAさんの親は争いを回避できます。ただし、財産が主に自宅だけの場合には、遺留分をどのように用意するかをあらかじめ検討しておく必要がありますので注意が必要です。
「あらかじめ遺留分を考慮した内容の遺言」を書くことで、お互いを尊重していますから気持ちの面でも受け入れやすくなるのではないでしょうか。

これらの他には、

③ 遺留分を請求できる人が、遺言を書いた人が亡くなる前にあらかじめ家庭裁判所に遺留分放棄の審判の申立てをしておく

④ 家庭裁判所の審判で特定の法定相続人を相続から廃除しておく

などの方法がありますが、③はかなりの説得が必要ですし、④は非行や虐待など相応の理由が必要ですから、これらは争いを避けるという意味ではなかなか難しい方法です。

■LGBTカップルが遺言を作成するときのポイント!

LGBTカップルが遺言を作成する場合は、法定相続人と残されたパートナーが争いにならないよう注意して遺言を作成して下さい。
また、親族やパートナーとの関係は様々です。兄弟姉妹には遺留分がありませんが、第三者に財産を奪われると感じれば争いに発展することも考えられます。一概に「この方法がベスト」だとは言えませんので、もしわからないことがあれば一度専門家に相談してみることも一つの手段です。

READ  同性婚ができないことで生じる問題とは?

about lgbt law affair

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です