カミングアウトをした理由
私は、人材派遣会社に勤めて3年目のサラリーマンです。セクシュアリティは、ゲイです。
今回は、職場でカムアウトする事について、私自身の経験を交えてお話させて頂きます。あくまでも私個人の周囲の反応である事を、まず、ご理解頂ければ幸いです。
そもそも職場でカムアウトを行った理由のひとつは、本音で話せず嘘を吐くしかない人間関係のストレスからでした。
仕事と人間関係は切っても切り離せません。休憩時間、職場の飲み会など、仕事以外の話をする時間はたくさんあります。恋愛の話、特に男性同士だとAV女優や風俗の話など、ストレートを装って話すにも付いていけない事がしばしば。具体的な話には触れずに周りに合わせて反応をするしか無い部分が時折、腹黒いと言われる事もありました。だから、本当の自分が評価されない事が悔しくて、言い訳にするくらいなら、ゲイであることをカミングアウトして自分の逃げ道を無くしてしまおうと、半ば自暴自棄な気持ちだったのがキッカケでした。
職場でカミングアウトをして変化したことを4点、あげたいと思います。
変化①:職場で本音を話せるようになった
私が経験したカミングアウトに対する反応の多くは、よく腹を割って話してくれた、という喜びの反応でした。
お前と知り合えて良かった、そんな嬉しい言葉を何度も頂きました。言ってしまえば、こんな話は仕事と直接は関係が無いのでそもそもする必要が無い話です。それでも、自分から心を開くことで相手も心を開いてくれるという事が、私の場合セクシュアリティの話を通じて実感出来ました。
私はそれ以来、職場でも表面上でなく本音で話せるようになり、仕事もうまく回るようになりました。何より職場の人とそれがキッカケで仲良くなれた事が、結果に繋がったと思っています。
変化②:LGBTを身近に感じてもらうキッカケを作る事が出来た
他には、私がゲイであると伝えることで、周りがLGBTを理解しようとするキッカケになれた側面があります。
カミングアウトすると、初めてそういう人に出会ったという事もよく言われます。自分という存在を通して、メディア以外で初めて身近に知る事が出来、関心を持ってもらえました。理解は難しくとも、知る事、存在を受け容れてもらえるだけで、随分と気持ちは楽になりました。
それ以来、例えばまだ同じ職場でも私がカミングアウトをしていない人と一緒に話すときなど、既にセクシャリティを伝えている人がそばに居ると、会話にフォローを入れてくれるなど配慮があり、とても感謝しています。
変化③:ゲイである事がネタとして扱われる時がある
カムアウトの仕方、状況にもよるとは思いますが、私の場合は大抵が飲み会の場です。お酒も入って言い易いというのもそうですが、シリアスな環境だとかえってその後が話し辛くなり、距離を置かれてしまうのではないかと考えるからです。
しかし、真剣に話を聞く場所でないところで話すという事にはリスクもあります。
まず、カミングアウトをしても最初は信じてもらえず、冗談として受け取られたり、わざとらしく引かれたりします。信じてもらえても、当然みんな最初は面白半分、興味本位ですから、大抵の質問はセックスに関する事ばかり。それでもまずはそういう所からでも入口として関心を持ってもらえたら嬉しいので、私は自分に分かる事なら赤裸々に答えるようにしています。
しかし最初は話のネタとして面白おかしく扱われる部分がある事は事実。拒絶されなかったとしても、お笑い種として終わってしまうなら、それは結局言わなければ良かったと思ってしまいます。
変化④:家族や恋人を傷付けるかもしれないリスクを負う
もし、カミングアウトが上手くいったとして、話が進むと出てくるのは家族や恋人の話です。
こと恋人においては、写真を見せてと言われる事も。その時に、私は見せてしまった事があります。しかし考えてみれば、これはアウティングという、相手の同意なく彼がゲイであるという事を明かす行為でもありました。彼は気にしないと言ってくれましたが、逆の立場だったらと思うと少し怖くなり、深く反省しています。
カミングアウトを行う際に注意したいのは、全て自分一人の問題で完結しないという事です。いくら自分がオープンでも、パートナーの権利まで勝手に踏み込んではいけない。もし共通の知り合いが居たら、知られたくない事だったとしたら、それはきっと恋人を傷付ける事になります。
極端な話ですが、もし結果的に拒絶されて会社に居られなくなったとしたら、家族にも迷惑がかかります。自分自身を明かすという行為は、同時に自分の身近な存在にも何か影響を与える可能性がある。その事は少し意識しておいた方が良いのかなと思います。
カミングアウトしてよかったか
職場でのカミングアウトについては、良かったと心から思う
私の仕事は異動が多く、職場環境と人間関係が定期的に変わるのですが、最近いちばん嬉しかった言葉は、「今度また彼氏連れて遊びにおいでよ」という異動前最後の挨拶をした際の店長の言葉でした。飲み会の軽い冗談も含めたノリから、素面な状態でもそのように言ってもらえる状態になった事が本当に嬉しくて、そんな人達のためにも頑張りたいと新たなモチベーションにも繋がりました。
それとはまた別の話で、私が尊敬する上司にゲイの知り合いが居るという事で、紹介して頂いた事もあります。紹介というのは恋愛的な意味では無く、同じ業界で働いているゲイの先輩なら、そこ同士でしか分からない悩みや将来の事が話せるだろうという、上司の配慮でした。そういう新しい出会いとキッカケに繋がった事も、良かったと思える事の一つです。
カミングアウトは、自分の環境をより良くするためにする
私は職場でカミングアウトする時に「もしダメだったとしても、仕事は仕事、かえってより一層割り切るキッカケになる」という気楽な感じで伝えています。自分の環境をより良くするために、働き易く、楽しくするためです。自分に優しくしてもらうためではありません。黙って傷付いているよりは、吐き出して傷付く方が私はスッキリしました。
カミングアウトというと強張った感じがしますが、逆に緊張して真剣さが増すと、聞く方も重い受け止め方しか出来ずに抱えきれなくなります。実際、軽いノリで話してくれたおかげでこちらも色々聞き易くて良かったと、伝えた人からは言われます。私は友人や家族にもオープンにしているので、そこでの慣れがあったから出来た事かもしれません。
みなさんのカミングアウトはいかがでしたか?ぜひ下のコメント機能で、みなさんのお話をお聞かせください。