LGBTコミュニティからのTの排除を求め、LGBが署名活動
トランスジェンダーをLGBTコミュニティから排除しようとするオンラインの署名活動が、一部のゲイ、レズビアン、バイセクシャルの当事者によって開始された。この過激とも言える運動が、トランスコミュニティとの亀裂を産んでいる。
LGBTからTを切り離す
ゲイ、レズビアン、バイセクシャルの当事者らが始めた署名活動は、Human Rights CampaignやGLAADなどの組織やGay Star News、Huff Post Gay VoicesといったLGBTのニュースサイトなどに対して、トランスコミュニティの内容を扱うのをやめるよう求めている。
署名の内容は“Drop the T”というユーザーネームの匿名の人物によって書かれており、これまでで620人がこの署名に参加している。彼らはトランスジェンダーの平等のために戦うことは、「結局のところ女性やゲイがめざすゴールからは逆行する動きであって、そぐわない」と考えている。トランスジェンダーの平等に反対する人達から女性やゲイやレズビアンの当事者が悪く言われたり、疲れ切ったりしているというのだ。
「私たちはトランスコミュニティに対して不寛容だとか偏見があるとかと主張しているのではない。人生において自分の道を決める大人の権利を認め、尊重している。」
「私たちは、トランスジェンダーの考え方は、女性やゲイ、そして子どもたちの権利と矛盾すると感じている。上に述べたような組織やメディア(LGBTのニュースサイトなど)には、トランスジェンダーの運動とは切り離し、支持基盤であるゲイやレズビアンについて扱う状態にもどすよう呼びかけている。」
また、署名の文章にはトランス女性は「女になれない」という、フェミニストのジャーメイン・グリアの以下の言葉が引用されている。
「あなたが去勢してドレスを着ているからといって、あなたが女性になったというわけじゃないわ。」
署名活動の内容と主張
映画「ストーンウォール」について、実際のストーンウォールの反乱での有色人種のトランスジェンダーの存在が描かれなかったことに不満が集まっていたことにも言及されていた。これについては、トランスコミュニティやそのアライを「ゲイとレズビアンの歴史や文化を書き換えている」と非難した。
また、トランスジェンダーへの偏見も含まれている。トランスジェンダー当事者を保護する条例が可決したら、シスジェンダーの男性がトイレや更衣室に入りたいがためにトランスジェンダーであると言い張るだろう、などの差別的な記述があった。
署名活動への批判
GLAADは署名活動に対して、以下のような声明を発表している。
「GLAADは断固としてトランスコミュニティを支持し、『LGBTからTを排除する』という非常識で有害な考え方をはっきりと拒否する。」
「トランスジェンダーの人たちは数十年にわたって、全ての人のための平等を推し進め、レズビアン、ゲイ、バイセクシャルの人たちとともに戦ってきた。時には完全な平等を達成して社会から受け入れられるため、運動を引っ張ってきた。多くのトランスジェンダー当事者はレズビアン、ゲイ、バイセクシャルの当事者でもある。彼らは切り離すことができない、大切なLGBコミュニティの一部なのだ。LGBTに反対する活動家が私たちの生活にとって不可欠な基本的人権や保護を奪おうとした時には、私たちは仲違いして潰し合うのではなく、共に立ち上がらなければならないのだ。
さらにHuman Rights Campaignのチャド・グリフィン代表は署名活動に対して以下のようにコメントした。
「これは完全に間違っている。…学校でのいじめは同性愛者の子どもだけでなく、トランスジェンダーの子どもも悩ませている。40万人の子どもたちに対して、里親制度で幸せな家庭を提供しているのはレズビアンやゲイの親だけではなく、バイセクシャルやトランスジェンダーの親も含まれているのだ。」
「私たちはひとつの運動であり、団結したほうが強くなる。私たちは1つのコミュニティだ。そしてHuman Rights Campaignは私たち一人ひとりの平等が達成されるまで活動し続けるつもりだ。」
TをLGBTから排除しようとする今回の署名を受け、逆にTをLGBTに留めることを訴える署名も始まっているという。こちらは既に500人以上の署名が集まっている。
画像出典:Pink News