「あー、アセクシュアルでしょ? 聞いたことあるよ!」
なんて言うものだから安心して話を進めていたら、実はとんでもない勘違いをされていた、ということがたまにあります。どうやらwebメディア上の記事などで、間違った、あるいは偏った情報が流布されているのが現状のようです。
そこで今回はアセクシャルが受けがちな誤解をアセクシュアルの筆者の経験をもとにいくつかご紹介します。中には結構「惜しい! 近いとこまで来てる!」というのもあるのですが……。
誤解1. 「草食系みたいなものだよね!」
一時期テレビで話題になった「草食系男子」という言葉。実は筆者自身「草食系」の定義がよく分からないのですが、どうやら恋愛に奥手で平和主義な男子のことを言うようです。なるほど、草食動物のように内気でおとなしいという意味なのですね。
ところで過去に動物園で完全な草食動物のカピバラが、一緒に飼育されていたクモザルを襲って死なせてしまった事故なんかもありましたが、本当にその認識で大丈夫なのでしょうか。
ともあれ、「草食系」はあくまで恋愛に対して消極的という程度の意味なので、アセクシュアルとは異なります。アセクシュアルはセクシュアリティなので、「消極的な性格」とか「異性への接し方がわからない」などとは根本的に違うのです。
ところで「草食系」を調べるうちに「仏男子(ブッダンシ)」という単語にも遭遇したのですが、こちらは草食系男子以上に謎に包まれていたので保留にしておきます。多分、奥さんや子供を捨てても悟りを目指すタイプの男子のことなのでしょう。
誤解2. 「人間が嫌いなんだよね!」
そういう質問ばかりされるうちに嫌いになっていくケースはあります。そもそも、人間が好きか嫌いかなんて人それぞれです。異性が好きな人にも同性が好きな人にも人間が嫌いな人はいますよね。人付き合いが苦手だったり、狭い交友関係を好むタイプだったり……。セクシュアリティの話題を抜きにしても、ひとりの人間としてどのように他者と関わるかは人それぞれです。
ちなみに筆者の友人には「彼氏よりキャラメルちゃん(ダックスフンド・5歳)の方がどう考えても大切」と公言して憚らない女の子がいます。来月入籍予定だそうです。お幸せに。
3. 「”ノンセクシュアル”とも言うんだよね?」
これが一番「惜しい!」と思うパターンです。実はこのあたり、アセクシュアル・ノンセクシュアルの人たちの中でも単語の使い方にばらつきがあります。
ノンセクシュアルというのは他者に対して恋愛感情を抱くけれども性的欲求は抱かない人のことを指します。が、これは日本でしか使われていない単語で、海外ではこうした人々も「アセクシュアル」と呼ばれているのです。
他者に対して恋愛感情も性的欲求も抱かない場合は特に「アロマンティック・アセクシュアル」と呼ばれます。現状日本でごく普通に「アセクシュアル」という場合はこちらのみを指すことが多いのですが、海外の方が相手の場合は気をつけましょう。というより、当事者も気をつけていきたいところです。
「じゃ、結局アセクシュアルってどういう人なの?」
「あれも誤解、これも違うって言うなら結局アセクシュアルって何者なの?」と思われる方もいるかもしれません。一言で「アセクシュアルとは何か」と説明する際には、私はいつもこう話しています。
「異性愛者の人が同性を恋愛対象として見ない、同性愛者の人が異性を恋愛対象として見ないのと同じように、異性も同性も恋愛対象として見ない人のことです」。
異性愛者の方は別に同性が嫌いなわけでも、何か理由があって同性との恋愛に消極的になっているわけでもないでしょう。同性愛者の方も同じだと思います。その感覚が全ての性に対して向いているのがアセクシュアル。
いかがでしょうか、この感覚が少しでも多くの方に伝わっていれば幸いです。
画像出典:JAZEBEL , SEX AND SOCIETY, Mashable Asia