トランスジェンダーにとっての「埋没」とは?
『埋没』という言葉をご存知でしょいうか?トランスジェンダーでいう『埋没』とは、社会の中で完全に自らの望む性別で生きることを指します。完全に誰にも知られずにひっそりと生きているトランスジェンダーもいるということです。
埋没する理由として、
『波風立てずに普通に生きたい』
『変な目で見られたくない』
『過去の自分を消したい』
といったことが挙げられます。
埋没している人は、トランス(性別移行)前後に特に数多くいます。
本記事では
『どのように埋没してるの?なぜ埋没するの?』
ということについて触れていきます。
ビフォアートランス型の埋没
身体的な治療をせずに心と身体の性にギャップを持ちながら、ほぼ誰にも知られずに生活している人です。「カミングアウトできず、治療に踏み込むこともできない」という人がいる一方で、ポジティブに「身体に負担の掛かる治療をするよりも、ギャップを持ったまま自分らしく生きたい」という人もいます。
特に30代後半以降のトランスジェンダーの人で、10代のときに自分を隠して生活しながらそのまま就職し、現在は社会的に成功している人の中に多い印象があります。また、若い世代の中にも早い段階で自己を確立し、自分らしく生きることを楽しんでいる人たちもいますね!
アフタートランス型の埋没
身体的な治療も一通り終わり、戸籍上の性別も変更した人です。住む場所、付き合う人、職場などを変えることで、一切カミングアウトすることなくトランス後の性別で生活できます。トランスジェンダーのコミュニティーと関わることもなくなります。
埋没しているけれど、何かの拍子にバレてしまうのではないかとヒヤヒヤしている人もいますし、あえてカミング・アウトする必要もないしトランスジェンダーとしての悩みも減ったため自然と埋没する形になったという人もいます。
このように埋没している層は、潜在的にとても多い印象があります!
性別二元論が生み出したもの
誰にも知られたくない人を公の場に引っ張り出すことや、犯人探しのように見つけようとすることは、絶対にしないでくださいね!埋没すること自体が悪いことでは決してありません。
しかし、『埋没』にはネガティブな一面があるのも事実です。男性と女性しか存在しないという性別二元論の社会の中では、トランスジェンダーは生きにくいのです。ほとんどの人は生きにくさから逃れるために性別二元論という隠れ蓑にいるだけなんです。
埋没がなくなる社会って?
現在、日本ではセクシャリティーをオープンにしている当事者やアライの人達によって性別に関しての多様性が少しずつ可視化されてきました。トイレや更衣室などの設備についての見直しと同時に、社会に生きるひとりのひとりに『自分のすぐとなりにセクシャルマイノリティーがいることが普通』という意識が根付くことが大事だと感じます。「実は体は女性だけど、心は男性よりなんだよね!」「あ、そうなんだ!それじゃ◯◯のことで困ってない?」といったような会話が職場や学校でとなりにいる人とできたら、とても安心しますよね!心と身体の性別にギャップがありながらも、息苦しさや危険を感じずに暮らしていける社会が近い将来やってくるかもしれませんね!
埋没しているトランスジェンダーへ
手術をしても、戸籍の性別を変更しても、トランスジェンダー特有の悩みや苦しみはあるはずです。埋没していても、バレないかとビクビクすることもありますよね。そういった孤独を味わうことがないように、当事者同士のネットワークの中に少しでも居場所を見つけて欲しいと個人的には思っています。