世田谷区も同性カップルを認める!
東京新聞にて、以下のような記事が7/29の夕方に掲載されました。
東京都世田谷区は29日、同性カップルの宣誓を認める公的書類を発行すると定めた要綱案を区議会に報告した。要綱案には区の発行する書類の具体的な効力は明記されていないが、公的機関が同性カップルを承認する制度が広がることで、性的少数者(LGBT)への偏見や不利益の解消が進むことが期待される。区は11月をめどに書類を発行する方針。
要綱案によると、同性カップルが区にパートナーであることを宣誓し、区が押印した宣誓書の写しと、受領の証書を交付する。宣誓するには、双方が二十歳以上で区内に居住するか、一方が区内に住み、もう一方が転入を予定していることなどが条件。区が十年間、宣誓書を保管する。
ここでは、世田谷区と渋谷区の同性カップルへのパートナーシップ制度の違いを3つのポイントにわけてお伝えします。
1.”条例”ではなく”要綱”!
渋谷区の同性パートナーシップ制度は条例でしたが、世田谷区の同性パートナーシップは”要綱”です。”条例”はみなさんも聞き慣れた言葉だと思いますが、”要綱”についてはあまり聞き慣れない方も多いと思いかと思います。国民生活センターに非常にわかりやすい説明があります。
要綱とは、事務をするうえ で必要となるマニュアルだと考えればいいでしょう。Aさんに対してとBさんに対してとで取り扱いが異なってしまっては不公平なため、こうした要綱が作られます。例えば、補助金を出すためには法律も条例も必要ありませんが、不公平がなく事務処理をスムーズに行うために、補助金実施要綱などをあらかじめ定めておきます。
国民生活センター – 法令の種類を知ろう2
条例は法令の1つであり、議会の議決を経て決定される、いわば、みんなが決めたのでみんなが守らなければならない”ルール”です。それに対して要綱は、首長(この場合は世田谷区長)の権限で策定される”事務用マニュアル”だということです。今回の世田谷区の方は、議会で合意を経て決められたものではなく、世田谷区長が自らの権限で作成したものなのです。
2. 申請に公正証書が必要ない!=無料で簡単!
渋谷区でパートナーシップ制度を申請するためには、カップルの間で結んだ公正証書が必要でした。この公正証書は行政書士などのプロを雇ったりなどし、公証役場などにも行く必要があります。任意後見契約が大体1名20,000円だとしても、2名で約40,000円の費用がかかりますし、準婚姻契約書も15,000〜20,000円程度の費用がかかります。それが、世田谷区では無料で、カップルの2人が宣誓さえすれば公的書類の交付を簡単に受けることができます。
3. 制度に違反した事業者名を公表するかどうかが不明
(事業者の責務)
第七条
3 事業者は、男女の別による、又は性的少数者であることによる一切の差別を行ってはならない。
渋谷区の条例では、同性パートナーシップ制度に違反した事業者名を公表することを条例に盛り込んでいます。しかし世田谷区の同性パートナーシップではそのような決まりはありません。実際にこのような問答が区議会の区民生活常任委員会で行われたそうです。
この日開かれた区議会区民生活常任委員会では、区議が「宣誓書を見せれば、事業者が対応をするといった具体的効果を考えなければ理念にとどまるのでは」と質問。
区側は「性的少数者に基礎自治体が向き合い、啓発の第一歩となることに意味がある」と要綱の意義を強調した。
賃貸住宅の入居を断られたり、病院での家族の面会、生命保険など、同性カップルだからという理由で断られた場合、渋谷区の制度なら事業者名を公表されることがありますが、世田谷区はそのようなことは明記されていないようです。
3. 渋谷は10月から”証明書”、世田谷区は11月から”宣誓受領証”
渋谷区は今年2015年4月に同性パートナーシップを認める条例が施行されるが、10月から証明書の発行が行われる。世田谷区は本日7月29日に要綱を区議会に報告し、11月に宣誓書&受領証書が発行されるようになる。
総論
世田谷区の同性パートナーシップは、法令ではなく要綱です。社会的インパクトという意味で日本の同性愛者の権利獲得に繋がるので、今の日本の同性愛者たちに必要なものであることは間違いありません。しかし、渋谷区と同じ、もしくは渋谷区よりもより法的効力は薄いものになります。とはいえ、渋谷区のパートナーシップ制度でたびたび批判を生んでいた”なぜ同性カップルだからという理由で証明書を手に入れるのにお金がかかるんだ”という点をクリアしたという点で、日本において画期的です。今後も、他の市区町村なども動き出すことでより制度が磨かれていき、より多くの同性愛者やLGBTの人たちが暮らしやすい社会になっていって欲しいですね。
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