クリスマス商戦用のあるCMがゲイの間で話題になっている。
アメリカでは、Thanksgiving Day (11月最終木曜日)からホリデーシーズンとなり、クリスマスまでの期間は自動車やデパートを初め、香水、おもちゃなど色々な会社がテレビで商戦用CMを打ち出します。中でも今年は、全米規模のデパート NordstromのCMが巷のゲイの間で話題になっています。
ごく普通にある光景なのか、それとも異様な光景なのか
まずは、このビデオを観てみてください。
窓際で外を見ているラブラドュードルが、通りから敷地の方に入ってくる男性に気づき、玄関へ向かうところから始まります。ドアが開き、家の中に入ってきたその男性が喜ぶ犬を抱き上げ、キスをするシーン、可愛らしい光景を映し出しています。その次の瞬間、奥の方から別の男性がやってきて、「おかえり」と旅行からの帰りをキスで出迎える。ストレートのカップルではごく普通に考えられるシーン、それをゲイカップルで映し出しているCMです。
Home. Heart. Holiday. “The Homecoming”
このCMのコンセプトは、Home. heart. Holiday. “The Homecoming” 、アメリカの過程で一般的にみられるような、家族の帰りを玄関で暖かく出迎えるシーンです。しかし、多くの人には【家庭=ストレートカップルが築くもの】という先入観があるのではないでしょうか? 犬や猫などのペットを家族の一員として考える事は現代では普通となっています。
しかし、ゲイカップル&ラブラドュードルで【家族】の温かみを再現しているこのCMは、ストレートの方からすれば、若しくはLGBTの方であって、先ほどの【家庭=ストレートカップルが築くもの】という先入観を持っている人にとっては理解に苦しむ人もいるかもしれません。そんな議論を招きかねないコンセプトが、クリスマスという一年の中でも最も大切な商戦時期・営業利益に大きな影響を与える時期用のCMとして採用されているんです。
同性婚が認められた国とはいえ、まだまだ問題の多い国アメリカ。
アメリカでは、2013年に合衆国最高裁判所により同性婚が認定され、異性婚と同様の権利が同性婚にも認められる事になりましたが、その実態は合衆国全体というわけではなく、既存の同性婚認定州のみに有効で、同性婚に反対の州には最高裁判所の判決は及ばないものでした。それが今年 2015年6月には最高裁判所の判決によって合衆国内のすべての州において認定される事が最終決定したのです。
しかしながら、それまで同性婚に反対だった州の中でもキリスト教色の強いケンタッキー州で起こった、書記官による同性カップルへの結婚証明書の拒否を巡っての事件など、日本でも報道された同性婚に対する米国内の問題は、皆さんの記憶に新しいかと思います。
そうなんです、アメリカという国は「自由の国」というイメージが強いかもしれませんが、実際は宗教的・政治的に保守派が多く存在し、ゲイがオープンに地域社会に受け入れられているなんてごく一部の大都市、それも多くは東西海岸沿いでしかないんです。
同性婚に対する侮辱に反発するかのような、同性婚賛成派の動き
Nordstromのような全米に店舗を展開しているデパートにとっては、今回のようなCMをテレビCMで流すなんて一種の賭けにもなりかねません。もし今回のコンセプトを男女カップルが演じていれば、なんの議論も起こさずに済むんですから。ですが、敢えて男性同士のカップル+ラブラドュードルで家庭を演出しているなんて、同性婚賛成派からしたら《にくい演出》、今年のクリスマスプレゼントはNordstromで全部買い揃えよう!って思うんじゃないでしょうか。
異様ではない、ごく普通の光景
自分が住んでいるサンフランシスコを例に挙げると、別々の家に住んでいるLGBTカップルもいますが、家賃が高いという理由もあって付き合ってしばらく経つと一緒に住み始めるカップルも多いです。そして、犬や猫を飼い始める。なかには結婚して養子縁組や代理出産、レズビアンのカップルに至っては自分で出産して子供を持ち、ストレートカップルと変わらない《家庭》を築いているカップルも沢山います。結婚していなくても、同性カップルの家庭は至る所で見かけます。
そんな都市に住んでいれば、Nordstromの今回のCMコンセプトは異様ではなくごく普通の光景。それが今後、保守的は州でもごく普通に見られるようになれば素敵だし、更にはその動きが渦を巻いて、日本をはじめ未だ同性婚が法的に認められていない国々にも届いて欲しいと思います。
今回のCMはFacebookで友人がシェアしていたところから発見しました。このyoutubeを観た時、自分の彼氏は少し涙ぐみながら嬉しがっていました。Gay Rightsのため応援してきた人の心を打つものなんだと思います。
画像出典:youtube.com