逃げ出したのち。
DVを受け、別れた僕は一度実家に帰り、すぐに別の住まいを探していました。もう男なんて信じることが出来ない。そのくらいに僕は疲弊していました。
けれど、実家にいても気が楽になるわけではない、誰かと話したい。会わなければこういった思いをすることもないだろう、メールだけにしよう。そう思った僕は掲示板に友達募集をかけました。話を聞いて欲しかっただけなので、特に自分のことは書かずに募集をしました。
とある方との出会い。
掲示板に投稿をし、しばらくしたころ、いくつかメールをいただきました。その中にSさんという方からのメールがありました。
「相談に乗ってほしい」と、これまでのことを病気のことを伏せた状態で話をしている自分に少し罪悪感はありましたが、Sさんとは他愛もないやり取りが出来、疲弊していた僕の心は安らぎ、毎日のSさんとのメールのやり取りがすごく楽しみになっていました。
まめに連絡をくれるSさんから、とある日、『今度会ってみませんか?』との話がありました。
二丁目で一緒に飲もう、そう誘われました。あんなにも裏表がある二丁目の世界。行くことが怖い。また誹謗中傷に合うのではないか。もしかしたら一緒にいるSさんにも迷惑をかけてしまうかもしれない。そう思った僕はSさんに二丁目は避けたい旨だけ伝え、ご飯の日取りの約束をしました。
初対面。
当日僕はとてもドキドキしていました。自分のことを何も伝えていない。相手に過度な期待をもたせていたらどうしよう。自分のことを伝えて、またヒドイ目に合うんじゃないか。色々な思いが頭の中を交錯していました。
そんなことを考えていた時、向こうからSさんがやってきました。ご飯を食べながら、他愛もない話が出来る喜びを久しぶりに感じていました。取り留めもない、どうでもいいような話だからこそ、僕はすごく気持ちが楽になりました。Sさん自身も明るく気兼ねが無い人でとても親身に話を聞いてくれる優しい人だったのでとても助かりました。
何度かご飯をし、その際にSさんに再度飲みに行かないか誘われた僕は勇気を出して、これまでの彼氏の事。HIVのこと。2ちゃんねるのこと。隠すことなく、全てを伝えました。Sさんは当初びっくりした様子でしたが、受け入れてくれました。
『それは怖くなるよね。』
そう言ってもらえたことをいまだに覚えています。
『僕の友達のお店だから、変なことがあればすぐに帰ればいいからさ?』
そう言ってもらえたので、まだ二丁目に再び行く勇気がなかった僕でしたが、勇気を振り絞り一緒に行くことにしました。
螺旋階段を上った先にある2階のお店。僕はドキドキしながらSさんに連れられ、お店に入りました。
1番最初から読む | 前の記事を読む | 次の記事を読む |