家族との関係
自分がゲイであることを親に言っている人、言っていない人、いろいろいると思います。HIVに関しては、私は、親や家族にはHIVであることは絶対に秘密にし、墓場まで持っていこうと思っています。なぜなら、親は私のことをとてもとても大切に育ててきてくれたので、一生治らない病気を患ったということを知ったりなどしたら、たとえそれが薬で抑えられるものだとしても、卒倒してしまうくらいの精神的ショックを受け、親が精神病になってしまうんじゃないか、と思うからです。
ゲイ + HIV
今の日本で、ゲイであることを家族に伝えることは多くの人にとって大変だと思います。僕の友人には、親にゲイであるとカムアウトしたら、親に泣かれてしまったという人もいます。ただでゲイということを隠して生きていくのも大変なのに、HIVポジティブという秘密まで私は抱えてしまったのです。ときどき実家に帰って母親に会うと、何も知らずに「お帰りなさい!ほら、野菜たっぷりの焼きそば食べなさい。ちゃんと栄養とってるのー?」と言って焼きそばを出してきます。母親がいつも出す、栄養重視の、薄味の焼きそばです。父親もビールを飲みながら「最近仕事はどうなんだ」だとか、私が実家に帰ってきたせいで嬉しそうに話しかけてくれます。それが暖かくて、美味しくて、楽しくて…親と会話していると、自分がゲイであることや、HIVにかかっていることなんて本当は、嘘なんじゃないかと思いたくなってしまいます。「HIVに感染したんだ。」この一言が、家族のこの幸せな雰囲気を一気にぶち壊す破壊力を持っているのだと思うと、絶対に家族には一生、言えません。顔は家族の前ではとても幸せそうにしてても、どこかで、家族に距離を感じています。
「あんたこの100万円、どうしたの!?」
一度、家族にHIV+であることがバレそうになったことがありました。当時学生だった私は親の健康保険の扶養に入っていました。そのため親の健康保険を通じて、抗HIV薬を手に入れていたのです。ある日、親から「健康保険に100万円とかかかってるってきたけど、これあんたどうかしたの!?」と突然メールが来ました。ものすごいビックリしました。同時に、パニックになりました。どうしよう、下手な返答をしたらHIVが家族にバレてしまう。親はすごい心配している。とっさに私は当時の恋人に「どうしよう….」と相談しました。恋人も若干パニクってたのですが、「軽く歯の手術したとか言ってみたらどうかな??酷い歯の手術で入院とかして100万かかった、恥ずかしくて言えなかったとかいえばイケるかも」と言われて、全く歯の手術の価格とか知らなかったのですがとりあえずそれで言ってみました。どうやら親もよく手術の費用を知らず、(インターネットに弱い人だからか)ネットで価格を調べようともしなかったおかげで、「あら、そうなの….大事じゃなくてよかった」と見事になんとか切り抜けられました。
罪悪感
自分がゲイで、いろんな人とセックスをして、その結果HIVに感染して…こんなこと、絶対に家族には言えない。いままでもたくさん迷惑をかけたのに、これ以上迷惑をかけたくない。それに、親には死ぬまで幸せに生きていて欲しい。だから、私は自分がHIV+であることを家族に隠して生きています。兄弟姉妹もいますが、全員に隠しています。カムアウトする友人も慎重に選んでいます。家族はインターネットに弱い人たちなのでここで記事にしても大丈夫だと思っていますが、正直少し怖いとも思っています。
いつか、両親が亡くなったら、もっとオープンにしていい日が来るかもしれません。その日までは、墓場まで持っていく思いです。
画像出典:It’s All So Trivial: Emotional Isolation and Cancer Patients
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