9月2日に行われたフルーツ・イン・スーツのオーストラリア大使館で行われた日本での活動2周年記念パーティを取材しました。
フルーツ・イン・スーツは、香港、シンガポール、メルボーン、シドニー、ブリスベンを含む都市で活動しており、日本においてはLGBT理解促進および支援のため2014年から有志による活動を開始し、今年一般社団法人を設立している。
過去には「LGBT法連合会」、「NPO法人EMA JAPAN」や「いのち リスペクト。ホワイトリボン・キャンペーン」等の団体への支援実績があり、年間を通し講演会やネットワーキング・イベントを主催している。
様々な社会変革についてのスピーチ
オーストラリア大使からのスピーチでイベントが始まった。
「思えば、永住権ビザの取得で同性カップルを正式に認めたのは1992年でした」と、オーストラリアの歴史を振り返り、
「来年の始めにはオーストラリアではmarriage Equalityについて国民投票を行おうという動きがあります」と現状を語った。
また、「今年7月の連邦選挙前に行われた際の世論調査では、有権者の70%が同性婚を認める為の法律の改正を指示すると答えました。
2010年11月の57%、2015年8月の69%と人々が年々同性婚に対して理解を深めています」と国民が年経るにつれ、同性婚への賛成率をあげてる現状を紹介した。
二人めのゲストスピーカーはBASE KOBEの代表であり、自民党主党性的指向・性自認に関する特命委員会アドバイザーでもある繁内幸治氏だ。
彼は、現在大河内茂太市議と共に講演会への参加や書籍でのリサーチを重ね、大河内氏がLGBTの取り組みを前向きに捉えて活動している旨を明かした。大河内市議は、2015年の6月にHIV感染者や同性愛者に対する差別的発言を助長する発言をした(記事)として、各種メディアでも報道されている。
また、自民党との取り組みや現状についても触れ、LGBT理解増進法案がなぜ必要かについて話した。
しかし、今年の8月には、自民党内から異論があり、特命委の主要メンバーの交代に伴い、仕切り直しを余儀なくされたとの報道もあったため、不安は残るが、今後の動きにも注目したい。
2人目のプレゼンテーションでは、任意団体であるWork With Prideの、今年6月21日に発表されたPRIDE指数のプロジェクトリーダーである川村安紗子氏が行い、PRIDE指標についてのコンセプトと指標基準についての説明があった。
「私が初めてのLGBTであるはずがない。必ず身の回りにいるが、気づいていないだけ」当事者によるパネルディスカッション
その後のパネルディスカッションでは、先述の川村氏と他2社から1人ずつの計3名が登壇し、フルーツ・イン・スーツの代表であるローレン・ファイクス氏のモデレートのもと、自身の企業におけるカミングアウトの実体験について語った。
川村氏は現在カミングアウトして働いている。「転職のタイミングでカミングアウトするか迷ったが、ここで受け入れられないのであれば、入る必要性を感じなかった」とカミングアウトに至った経緯と向き合ってくれた40代男性上司について語った。
また、別の企業の30代女性にカミングアウトした際に言われた「あなたは私が会った初めてのLGBTだ」という発言に対して、「私が初めてのLGBTであるはずがない。必ず身の回りにいるが、気づいていないだけ」と話した。
外資系コンサルティングファームに勤めるK氏は、2003年が自身初の企業内でのカミングアウトだと語った。その際には、相手からカミングアウトされた時にのみ、自身もゲイであることをカミングアウトしていたようだった。また、その後の自身のカミングアウトに対する反応がいいものばかりではなかったと話しながらも、話すことによって「自分が変わった。嘘をついている感覚がなくなり、より生産的に、よりポジティブになった」と語った。
外資系のヘルスケア関連企業で働くゲイのT氏は、自身のカミングアウトをこう話した。「HRからの厚いサポートがあり、職場環境は安心できるものだった。カムアウト前は男性である自分が家事のために早く家に帰らないといけないことも言えず、小さな嘘からそれに筋を通すための新たな小さな嘘が重なって、とてもストレスだった。
カムアウトしたことで同僚に、ワークライフバランスの話をできるようになり、他の同じように旦那がいる人と同じようにはなせるようになった」
また、自身のカミングアウト後に「社内メールで、自分宛てのカムアウトが多くなったことに驚いた。勇気をもらったと言ってもらえたりすることは嬉しい」と話し、カミングアウトをしないという選択肢を取る人が実際に存在していることにも言及した。
稲田氏に贈られたジャパン・プライド・アワードとその反響
イベントの最後には、フルーツ・イン・スーツが選ぶジャパン・プライド・アワードに、理解増進法案の概要をまとめた稲田朋美防衛相および、先述の繁内幸治氏が選出されたことが発表された。
稲田氏はLGBTに関する課題を「人権問題として周知理解を進めていくべきだと、ますます感じました」と発言し、自身が特命委員会の設置を牽引するなど、LGBT関連の話題には前向きに取り組む姿勢を示している。
しかし、今年の6月、自民党の政務調査会からリリースされた「自民党の考え方」の内容や、氏のこれまでの家族感に対する発言などから鑑み、表彰された件に関して、各種SNSやメディアにおいて、疑問の声も挙げられた。
それに対して、ファイクス氏が、9月8日のプレスリリースにて、以下のように回答している。
「授与の理由として、稲田氏は自民党政調会長として理解増進法案の概要をまとめた功績および日本 における LGBTへの理解増進に今後大きな力となっていくことに対する期待が込められている。繁内氏については長年LGBT支援に貢献してきた実績および今後への期待が込められている。稲田氏は会場の参加者に送ったビデオ・メッセージで『当事者の皆さんが学校や職場などで直面している困難な現状は人権に関わる課題である』と語った。繁内氏は、LGBTに対する理解が不十分な人々の言動を批判するのではなく、あらゆるレベルで理解増進に努め、対立ではない相互理解から環境を改善していくことを会場の参加者に求めた。 」
現在も様々な企業やNPOがLGBTに関する取り組みを進めている。日本は2020年に東京オリンピックを控えているが、2年前のソチオリンピックでは以下のような課題も見られた。
ソチ五輪開会式 欧米主要国は欠席 同性愛禁止・人権を問題視(記事)
それに対し、日本は国家レベルでどれだけの施策を打っていけるのか。今後の動きにも期待したい。