[]外務省の“時代錯誤“ 離任のデンマーク大使「皇居訪問」で同性婚パートナーNG!

サンデー毎日 2015年7月12日号 144-145P

http://mainichibooks.com/sundaymainichi/backnumber/2015/07/12/

>外務省の“時代錯誤“ 離任のデンマーク大使「皇居訪問」で同性婚パートナーNG!

 6月25日午後、天皇陛下は皇居にある宮殿にお出ましになった。駐日デンマーク大使、A・カーステン・ダムスゴー氏にお会いになるためだ。この日、ダムスゴー大使は離任の挨拶のため、宮中を訪れた。

 天皇陛下の公務には駐日大使ら外交官、外交使節らの訪日、離日などに際しての挨拶を受けることも含まれる。両陛下をはじめとする皇族方がその都度お会いになっており、年間50カ国前後に上るという。

 宮内庁のホームページには、(天皇陛下が皇后陛下とご一緒に、外国の首相や大使、その夫人などの賓客とお会いになることをご引見といい、両陛下はこれらの賓客と親しくお話し合いになります。皇太子同妃両殿下をはじめ皇族方も外国の賓客と親しくお会いになっています)とある。国際親善上の重要な公務、いわゆる「皇室外交」としての位置づけである。

 ただ、今回のデンマーク大使との面談は通常と異なる点が一つだけあった。

 こうした面談は通常、配偶者を伴うのが通例とされるが、この日は〈陛下、離日する駐在デンマーク大使《単身》とご引見(御所)〉と動静が報じられた。

 皇室外交に詳しいジャーナリストが解説する。

 「大使自身が明らかにしていることですが、大使の配偶者は男性です。デンマークでは同性婚が法的に認められており、2011年9月に着任以来、大使もパートナーを配偶者として扱うよう日本側に求めできたのですが、外務省の判断は『配偶者』ではなく『家族』。配偶者ではないパートナーは同席できなかったのです」

 デンマークは1989年、世界で最も早く同性カップルの法的権利を認めるなど「性的少数者LGBT)」の権利に関する先進国といわれる。今年4月には、同性婚25周年を記念してデンマーク大使館でレセプションが開かれ、ダムスゴー大使も結婚して21年になるというパートナーの男性を伴って参加する姿がインターネットニュースなどで報じられている。


「人権侵害かつ外交上非礼だ」


 宮内庁関係者によれば、「外国で正式な婚姻関係にあるのであれば、同伴を認めてもいいのではないか」との議論もあったというが、結局実現しなかった。日本の伝統文化を愛し、被災地訪問などで精力的に職務をこなしてきた大使にとって、パートナー同伴での離日挨拶が叶わなかったのはいかにも残念なことだっただろう。本誌はデンマーク大使館を通じてダムスゴー大使に取材を申し込んだが、期限までに返事は得られなかった。外務省儀典官室に聞くと「事実関係も含め、お答えはしていません」(主席事務官)。

 LGBTの権利をめぐる環境は大きく変わりつつある。同性婚やそれに準ずる制度を認める国は増加傾向にあり、6月26日には米連邦最高裁が同性婚を合憲と判断、州によって異なる同性婚の扱いが全米で合法化される見通しだ。日本でも4月、東京都渋谷区で同性カップルに結婚証明書を発行する条例が施行された。

 今回の一件、こうした趨勢に逆行するものではないのか。トランスジェンダー問題に詳しい精神科医の針間克己氏が解説する。

「他国で正式に婚姻関係認められているにもかかわらず、配偶者として認めなかったのであれば、人権侵害であり、外交上も非礼にあたります。相手の文化を尊重していないことにもなり、国際関係上も損失でしょう。11年に国連で可決された同性愛者の人権を支持する決議に日本は同意しており、明らかな矛盾です」

 そもそもこの配偶者を巡る問題に関して、日本の政府の対応は一貫していない。13年6月、国賓として来日したオランド仏大統領は、事実婚の女性パートナーを同伴して宮中晩餐会に出席。正式な婚姻関係ではなかったが、事実上の配偶者として扱われた。また、一夫多妻制がある国からは、第二夫人を伴って要人が来日し、行事や式典に同行することも少なくないという。

「そうした中で、法的に認められた同性婚の配偶者を認めないのは整合性を欠く。永田町にくすぶる同性婚への差別的な感情に、外務省が配慮したという見方すらあります」(永田町関係者)

 LGBTにとって暮らしやすい社会環境を目指す「虹色ダイバーシティ」代表の村木真紀氏が語る。

「日本は東京五輪を控えていますが、開催都市は性的嗜好による差別はしてはいけないと五輪憲章に規定されている。日本は世界の潮流から大きく遅れています」

 相手国の制度を尊重し、礼をもって接することこそ異文化交流の基本のはずだ。

                        ジャーナリスト・高城龍二

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