トランスジェンダー女性が性別移行中の画像を投稿、SNSのヌード写真に関する規則の性差別に抗議
日本を含め多くの社会では、公の場で男性が上半身裸で過ごしていても問題ないとされる。一方、女性はどうだろうか?
FacebookやInstagramなどの写真を共有できるSNSについても同じことが言える。SNSでは投稿される写真について規則や基準がそれぞれ設けられており、生殖器を見せることは男女とも禁止されている。しかし乳首に関しては、男性では問題なくても女性では違反とみなされてしまうのだ。
この男女間での乳首の扱いの偏見に対して、挑戦する人物が現れた。カナダのビクトリアに住む、コートニー・デモネというトランスジェンダー女性だ。
#DoIHaveBoobsNow?というキャンペーン
コートニーは「#DoIHaveBoobsNow?」というキャンペーンを始めた。彼女は自分の性別移行中のトップレスの写真を投稿し、「Do I have boobs now?(今の私にはおっぱいがある?)」という質問を投げかけるのだ。彼女はSNSのヌードに関する規則の偏見を明らかにするために、FacebookとInstagramがいつ彼女の写真を削除するかを待っているという。
彼女はこの実験が、欧米諸国で共有されている女性の身体に付随する性的な考え方に異議を唱えたり、SNSがトランスジェンダーや性別にとらわれない生き方をする人たちをどのように捉えるのかをはっきりさせたりするのに役立つといいと思っている。
「私はいつから乳首を隠し始めなきゃいけないの?」
公の場でトップレスでいられないことが問題なのではない気がする、とコートニーは話す。しかし彼女は、英メディア・the guardianに以下のように語った。
「これは女性の身体についてまわる性差別のはっきりとした例なの。」
「私は胸が膨らんでいくどの段階で乳首を隠さなきゃいけないの?私はすでに見られるのが恥ずかしいと感じてる。でも社会はどの段階で乳首を見せていることが不適切だというの?」
#FreeTheNippleのキャンペーン
コートニーのキャンペーンは「#FreeTheNipple(乳首を解放せよ)」という、女性がSNS上に乳首の写真をアップすることで、社会やソーシャルメディアの女性の体に対する検閲制度に抗議したり欧米の文化の中での女性の乳首を性的なものでなくそうしたりする運動の延長とも言える。
FacebookやInstagramは#FreeTheNippleのキャンペーンを歓迎していない。そのハッシュタグで検索すると、このハッシュタグは規則に違反しているため表示できませんとのメッセージが表示されるという。
他の#DoIHaveBoobsNow?の参加者の意見
28歳のアイビー=クイン・カレンは、コートニーの影響を受け、#DoIHaveBoobsNow?のキャンペーンに参加した。アイビーは自分のジェンダーがよくわからないため、he・sheなどの性別が特定される代名詞を使わずにtheyを使ったり、Mr.やMs.ではなく、性別に中立なMx.などの敬称を使ったりするという。
「Facebookは自分の性別を自由に記入できるようにしているのに、とにかく胸に関しては男女の2つの性別に当てはめて判断している。完全に無意味だし、矛盾していて、言うまでもなくトランスジェンダー女性を嫌悪しているみたい。完全なる偏見よ。
例えば、私にふくらんだおっぱいがあると彼らが決めれば、彼らは私に“女性の乳首”があるというんでしょうね。でも私には(“女性の乳首”は)ない。私にはただ乳首があるだけ、今までもずっとあったようにね。」
FacebookとInstagramの対応
the guardianによると、FacebookやInstagramに裸の写真に関する規則とトランスジェンダーの人たちなどについて質問してみたところ、相談して折り返すとの返事をもらったという。
その後メールの返信には、トランスジェンダーの人の性別移行の過程の重要性を認識し、彼らが自分自身を表現できるよう最大限努力していくという姿勢を示した上で、以下のように述べられていた。
「私たちはFacebookやInstagramの自分で選択した性別に基づいて個人を認識しており、私たちの規則もそれに従って適用されます。」
この返答はコートニーなどが実際に経験したこととは食い違っている。彼女や他のトランスジェンダー女性は、胸は平らであるものの自らを女性と認識し、代名詞もsheを用いているが、彼女らの写真は検閲を受けていなかったのだ。
一方、今回の件の後、誰かがFacebookの規則に違反しているとして彼女のトップレスの写真を通報したという。しかし、コートニーのSNS上の性別は女性であるという事実にも関わらず、彼女の写真は消されなかった。これはFacebookやInstagramが返してきたメールの内容とは明らかに矛盾している。
画像出典:the guardian
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