考察!雑誌の“LGBT特集”はこのように変化した

雑誌のLGBT特集の進化と今後は?

前回の記事「解説!雑誌の”LGBT特集”、当事者はどうみている?」では、2012年に同時発売された『東洋経済』、『週刊ダイヤモンド』のLGBT特集について執筆しました。あれから三年。LGBTという言葉はこの期間にどんどん世間に浸透していっているように思えます。そして、雑誌でのLGBT特集も増えました。そこにはどのような変化が見えて来るでしょうか?

ビジネス誌のLGBT特集は市場メインではなくなった!

ここ最近(2015年9月現在)、再びビジネス誌でのLGBT特集が多発しているように思えます。もちろんLGBTに関する出来事や団体の活動、インタビューが載ることは以前からありましたが、あちらを買ったと思ったらすぐにこちらが発売、と大々的な特集が連発されるのを肌で感じました。

まず、レインボーカラーに加工された写真に「LGBT」の大きな文字の表紙が目を引く『日経ビジネス(2015年8月24日号)』。前回の記事に書いた2012年の二誌に比べると、一目でLGBT特集だとわかります。これは三年の時を経て、六色の虹がLGBTの象徴であることが広く知られてきたのも大きいと思われます。表紙だけでも時代の進化を感じさせられます。「あなたの会社も無視できない」のタイトルどおりLGBTが職場でどんな悩みを抱えているか、それを解決するとどう円滑な職場になるか、といったことに焦点が当てられています。当事者に寄り添い、当事者でない人も職場で差別的な発言がないか振り返ったり、制服やトイレ、恋愛話などLGBTならではの課題に気づける内容になっています。市場としてだけでなく、より人間的にLGBTをとらえている特集です。

そして『経済界(2015年8月25日号)』では、第二特集として「LGBTと向き合う」を掲載。LGBTフレンドリーな先進企業への取材を中心に構成されています。渋谷区に続き同性カップルの支援に動いている世田谷区長・保坂展人氏のインタビューでは、区議会がどのようにしてLGBT問題に取り組んでいるのかがわかりやすく語られています。第二特集のためページ数は比較的少なめですが、多団体の熱い想いが凝縮されています。

『AERA(2015年9月14日号)』でも表紙から嬉しい変化が。『AERA』の「A」の字がレインボーになっているのです。これにはSNSでも喜びの声が多発。歴史ある雑誌がタイトルをLGBT仕様にするというだけで胸が熱くなります。「LGBTたちの新しい家族のかたち」のページでは、同性挙式を挙げたカップルや子育てをするLGBTにあたたかい目線で取材をしている。ドラァグクイーンのシンガー、コンチータ・ヴルスト氏のインタビューでの「私は誰も傷つけていない」という言葉には胸を打たれました。LGBTをカミングアウトしている各界の著名人の紹介も必見。

ビジネス誌以外もLGBTに注目するように

LGBT特集は、前述のようなビジネス誌だけにとどまらなくなりました。

ウェディング雑誌として地位を確立している『ゼクシィ』も2012年8月号から、『ゼクシィPremier』は12年8月発売号(当時の名称は『ゼクシィAnhelo』)から毎号、挙式の実例を紹介するページにLGBTカップルが登場しています。同性婚やパートナーシップといった言葉がより身近なものになってきた実感が湧いてきますね。

また、ファッション業界から高い支持を受ける『WWD Japan』2015年夏号での特集「LGBT Forever モードは性別を超えるのか?」は大変大きな話題になりました。ノー・ジェンダーファッション、ファッショニスタが選ぶ世界の“パワーゲイ”、LGBTが支持するデザイナーとブランド、といったファッション誌ならではの切り口から、歴史を紐解くLGBT事件簿、世界の同性婚事情やカップルインタビュー、映画などのカルチャーまで、盛りだくさんの特集はLGBT当事者かどうかにかかわらず読みごたえ満点です。

長きに渡りLGBTを掲載している『Tokyo graffiti』

LGBTがメディアで日の目を見る嬉しさと同時に、こんな不安がよぎります。
LGBTが「流行りモノ」として扱われているのではないか?そしてその流行はすぐに去っていってしまうのではないか?

そんな中で、LGBTという言葉が日本で浸透する前からLGBTを頻繁に掲載している雑誌もあります。それが『Tokyo graffiti(東京グラフィティ)』です。
カルチャーやライフスタイルを軸に様々なテーマで毎号特集を組んでいますが、恋愛に関する特集が定期的にあり、その中で必ずといっていいほどLGBTカップルに取材を行っています。日陰者扱いせずストレートカップルと同じように当たり前にLGBTを掲載する姿勢に惹かれ、筆者は学生時代にこちらの編集インターンにも参加したほど感銘を受けました。
2015年にはTOKYO RAINBOW PRIDEとコラボ企画も行っています。
9月23日から発売中の最新号は「LGBT COUPLES@渋谷」と題して、さらににボリュームのある内容です。こちらの記事でも紹介されています。

最後に、メディア関係者に伝えたいこと

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こうして、今後もLGBTがメディアに特集されることは増えていくでしょう。
しかしメディア関係者の皆様、LGBTを一過性のブームにはしないでください。LGBTは「LGBT」という言葉が生まれる前から存在しているということを、どうかお忘れなく。

画像出典:PEXELS

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ABOUTこの記事をかいた人

角 亜維子

平成生まれのレトロ育ち。 女子美術大学卒。 幼少期より抒情画やアングラ演劇に親しむ。 憧れの女性像は山口小夜子、イーディ・セジウィック、大島弓子作品のキャラクター。 レズビアンであり、特定非営利活動法人ReBit のメンバーとしてLGBTに関する出張授業や講演にも参加している。 同法人運営WEBサイト「LGBT就活」編集長兼ライター。 雑誌編集インターン、広告会社ライター等を経て現在はフリーランス。 随筆、評論、インタビューからフィクションまで、執筆お仕事募集中。